STAP騒動が持ち上がったとき、一つの細胞が個体の全遺伝子情報を持つ以上、ある刺激で細胞が万能細胞になったとしても不思議ではないと考えていた。STAP論文の共著者3人は当然、その存在を確信しているようだった。STAP細胞を見たことのない者が自家蛍光(※1)とか、トリソミー(※2)とか、ES細胞の混入(※3)とか、いろいろ否定的な意見を並べていたが、そんな外野の声より、実際にSTAP細胞を見たという、一流の研究者の話を信じていた。

    ・若山氏 2014年2月アメリカの幹細胞生物学者Knoepfler氏のインタビュー記事
    「私はSTAP細胞からSTAP幹細胞を複数回、樹立していますので、その度にES細胞が混入するとは考えにくいです。さらに、129B6GFPマウスからSTAP幹細胞を樹立したときは、その種のES細胞株を持っていませんでした。また、全体のmRNA発現データはSTAP幹細胞がES細胞ではないことを示唆しています。」

    ・丹羽氏 2014年4月7日記者会見での発言
    「小保方さん自身がリンパ球採取からSTAP細胞までの一連の流れというのを、もちろん自分の目で確認をしています。何回ありましたかね。3回とかでしょうか。そこがプロトコールエクスチェンジを書くにあたって逐一、手順を確認する必要がありましたので、そういう作業を行いました。」(34:50~)




    「少なくとも今、私が知る範囲の知見を持ってすると、そういう仮説(ES細胞/TS細胞混入)が真である確率は低いのではないかという位置づけです。こういう答えがない状態でこれまで恐らくES細胞のコンタミ(混入)だという話だけで一部、かたをつけようかというような話もあったと思うんですが、専門家の判断からすると、そんな簡単なものではないのではないですかということを今日、申し上げたわけです。」(0:00~)




    ・笹井氏 2014年4月16日記者会見での発言
    「STAP現象という方が正しいと思うんですが、体細胞から外部刺激によってリプログラミングがされて多能性を持つという現象、この現象をもしも存在しないと思っていたら共著者には加わってなかったと思います。・・・ES細胞の混入などは論文を書く前から、当然、研究者としては常に、真っ先に考えるようなことのひとつですので、それは論文を出す前から、それでは説明が出来ないということを何度も確認はしております。・・・例えば、内部細胞塊の初期の細胞を小保方さんが取ってきてSTAP細胞だと言って入れたということは、細胞のサイズの大きさが極端に違うことから世界の若山さんが間違えるわけはない。そういう風なことをひとつひとつ考えていく中で、その反証仮説として非常に私の中で説得力の高いものは、現在のところは見出していません。」(5:35~)




    しかし、若山氏は2014年3月を境にその発言を翻し、笹井氏は自殺をしてしまった。小保方氏、丹羽氏グループの両者によるSTAP現象の再現も成功せず(部分的には成功している)、STAP論文を調査していた「研究論文に関する調査委員会」(以下、「桂調査委員会」)は2014年12月25日、報告書を提出し、調査を終えた。この報告書の30ページにはSTAP細胞について次のように書かれてある。

    「第一は、本調査により、STAP 細胞が多能性を持つというこの論文の主な結論が否定された問題である。その証拠となるべき STAP 幹細胞、FI 幹細胞、キメラ、テラトーマは、すべて ES 細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できることが科学的な証拠で明らかになった。STAP 論文は、ほぼすべて否定されたと考えて良い。これだけ多くの ES 細胞の混入があると、過失というより誰かが故意に混入した疑いを拭えないが、残念ながら、本調査では十分な証拠をもって不正行為があったという結論を出すまでには至らなかった。これは、本調査委員会の能力と権限の限界でもあると考える。」

    「桂調査委員会」の結論は、以下の2つである。
    ①STAP細胞はES細胞の混入である。
    ②誰が混入させたか、また、過失か故意かは分からない。

    ②は意外に思った人も多いと思うが①については予想通りの結論であり、世間的にはこれがすんなり受け入れられてしまった。

    この調査では残存する試料のゲノム解析やSTAP 論文において用いられたNGS(次世代シーケンサー )塩基配列データの解析を行っていて、報告も専門的で、素人には手が出しにくい。また、科学コミュニティからも異議が上がっていないが、共著者が混入を否定した根拠に報告書は何も答えていないことから、やはり、ES細胞の混入という証拠はないのではないかと思い、報告書を少しずつ読み解いていった。

    案の定、報告書にはES細胞の混入という証拠はない。あるのはSTAP幹細胞と酷似したES細胞が存在するという証拠だけである。そしてSTAP幹細胞の中にはES細胞の混入なく作られたと思われるデータもある。ES細胞の混入などという単純な事件ではないということだ。いつもながら、世間が認識している事件とは全く違う事件の様相になったが、それを根拠を示しながら書いていこうと思う。

    参考に「STAP細胞事件年表」を掲載しておく。

    STAP細胞事件年表




    自家蛍光(※1)
    小保方氏が使ったマウスには万能細胞になると緑色に光るよう遺伝子操作されたマウスの細胞が使われていた。最初は光らない細胞が2、3日経つと光り始めるので万能細胞になった証拠とされた。一方、自家蛍光とは死んでいく細胞が同じように緑色に光る現象で、これを見間違えたというのが自家蛍光説である。当初、他の研究所で再現実験に成功したという報告は後で自家蛍光であったと訂正されている。理研が行った再現実験では緑色に光る自家蛍光でない細胞が確認されている。STAP細胞を作製するときには酸処理により8割の細胞が死んでいくが、遅延性の細胞死となる。このため自家蛍光と緑色に発色するSTAP細胞が混在することになる。

    トリソミー(※2)
    染色体が通常の2本対ではなく3本対になっている染色体異常のことを指す。小保方氏が公共データベースに登録した遺伝子情報を解析して、このトリソミーが8番染色体にあるのを見つけたという報告があった。8番染色体のトリソミーは胎仔として生まれることができない遺伝子異常であるため、1週齢の仔マウスから作ったという論文の説明は成り立たないとの指摘であった。さらにそれは長期培養したES細胞によく見られる現象だったので、ES細胞であるとされた。しかし、STAP細胞も増殖能力は低いが細胞分裂を起こすので8番染色体にトリソミーが起きても不思議ではないという専門家もいる。また、このSTAP細胞の試料はすぐに死んでしまうので論文に用いられた細胞とは違うのではないかという指摘もある。

    ES細胞の混入(※3)
    ES細胞とは受精卵が胚盤胞と呼ばれる初期の段階になったとき、その内部細胞塊を取り出し、特殊な培養をすることにより作られる多能性細胞である。ES細胞は胎盤にはならないことが知られているが、STAP細胞は胎盤にも寄与しており、ES細胞の混入ではこの説明が付かないとされる(ただし、胎盤にみえるのは卵黄嚢だという指摘もある)。丹羽氏によるとFI幹細胞の培養条件下で、ES細胞を培養してみたが、特に形態変化することなく、4~5回の継代後には全滅したと証言しているので、これもES細胞の混入では考えにくい。また細胞の大きさもSTAP細胞はES細胞の1/2程度で細胞質もほとんどない、特殊な細胞で外見上にも違いがあるとされる。


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    2015.07.22 Wed l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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