2014年1月にSTAP論文が発表されるとすぐに電気泳動写真の切り貼り、博論の画像流用といった論文不正疑惑が持ちあがった。内容的には論文の核心に触れるものではなかったが、STAP細胞そのものに対する疑念が生まれることになった。

    6月になると、突然、STAP細胞の存在自体を揺るがす情報が矢継ぎ早にもたらされた。

    ①2014年6月11日、日経サイエンスが、「STAP細胞 元細胞の由来 論文と矛盾」という題で8番染色体にトリソミーがあると指摘した記事を掲載。

    ②2014年6月16日、「STAP幹細胞を第三者機関が解析したところ、若山研がこれまでに維持してきたマウスや細胞のものとは異なるという結果が出た」と若山氏が記者会見。質疑応答では小保方氏がマウスをポケットに入れ持ち込んでも分からないという話まで出たが、マウスで作れるなら持ち込む必要はなく、持ち込むとすればES細胞ということになる。

    ③2014年6月18日、2チャンネルの掲示板に「小保方氏が若山研の引っ越しのどさくさにまぎれてES細胞を箱ごと盗んだ」という投稿があった。この後、NHKが7月27日、NHKスペシャル「『STAP細胞不正の深層」で取り上げ、また、石川氏がこれを理由に小保方氏を告発することとなった。

    ここで、①の遠藤解析ではトリソミーとは言えないと指摘したが、②は若山氏自身が7月22日に解析ミスがあり、若山研に存在するマウスだったと訂正している。③の告発については「事件の発生自体が疑わしい事案であり、犯罪の嫌疑が不十分だった」と神戸地検により否定されている。

    これらは全てES細胞でSTAP細胞を捏造したことを示唆する情報であったが、それらはことごとく間違っていたのである。そして、この間違った情報が後に重大な影響を及ぼすこととなった。

    理研は2014 年 4 月4 日、理事長を本部長とする「研究不正再発防止改革推進本部」を設置、その下部組織に外部有識者からなる「研究不正再発防止のための改革委員会」を設置していた。

    6月12日、この改革委員会が「研究不正再発防止のための提言書」でCDBの解体を提言したのである。会見で委員の一人は「STAP細胞事件」を「超電導研究不正(ヘンドリック・シェーン事件)」や「ES細胞捏造(ファン・ウソク事件)」と並ぶ三大不正事件の一つであるとまで断罪している(38分30秒から)。



    しかし、この時点では、石井調査委員会の2つの不正認定(3月31日)に対して、小保方氏が「不服申し立て」(4月8日)をし、理研が却下(5月8日)したばかりで、理研の予備調査(6月30日から)も始まっていない。

    この2つの不正認定された項目について、小保方氏の反論はさておき、2月下旬の若山氏の見解は次のようなものであった。

    (ア)切り張りが指摘されてたのはコントロールデータ。切り貼りはいけないが、物差しの位置をずらしただけなら、大きな問題はない。白い線でも入れておけばよかった。大事なのは右隣のSTAP細胞レーンでこの図で示したい内容には影響がない。

    (イ)使い回しが指摘されている画像は、自分が撮影し、元データはパソコンに保存されている。セットで掲載されている別の画像に問題はなく、間違いの画像を消しても内容に影響はない。彼女が自分で撮った画像でもないので、論文の編集途中でごちゃごちゃになった可能性がある。

    一方、不正認定した石井調査委員会の見解にしても、この時点ではSTAP細胞の捏造を示唆する情報はなにもなく、個人的な研究不正と捉えているだけで、世界三大不正事件の一つになるような話でもなく、とてもCDBの解体にまで踏み込めるようなものではなかった。

    (ア)研究者を錯覚させるだけでなく、データの誤った解釈へ誘導することを、直接の目的として行ったものではないとしても、そのような危険性について認識しながらなされた行為であると評価せざるを得ない。T 細胞受容体遺伝子再構成バンドを綺麗に見せる図を作成したいという目的性をもって行われたデータの加工であり、その手法が科学的な考察と手順を踏まないものであることは明白である。よって、改ざんに当たる研究不正と判断した。

    (イ)データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある。しかしながら、この2つの論文では実験条件が異なる。酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文1の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを小保方氏が認識していなかったとは考えがたい。また、論文1の画像には、学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えることから、この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である。このデータは STAP 細胞の多能性を示す極めて重要なデータであり、小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。

    実は、①について、遠藤氏は5月22日、理研幹部らにスライドを使って解析結果の全体を報告し、②については若山氏が、6月5日に理研の改革推進本部にその内容を報告していた。また、③については、理研が5月14日付で小保方研の保存試料リストを作っており、その中にLi氏の作ったES細胞も記載されていた。

    これらの誤った情報により、改革委員会は小保方氏がES細胞でSTAP細胞を捏造したと思い込んだのである。

    このため、改革委員会は、理路整然とSTAP細胞は有力な仮説であるとした笹井氏を糾弾し、またCDB解体まで踏み込み、笹井氏を追いつめてしまったのである。後から若山氏が解析は間違いでしたといっても後の祭りであった。

    この思い込みは、改革委員会だけに留まらず、理研の事前調査や桂調査委員会の調査にも大きく影響しているはずだ。調査はES細胞の混入を明らかにするために行われたはずである。もし、STAP細胞の存在を示すデータも合わせて探していたら、それを見つけていただろうと思う。

    何度も言うが、調査委員会で分かったのはSTAP関連細胞と酷似のES細胞があるというだけである。理研、調査委員会は予備調査を含め半年余り、ES細胞の混入の証拠を調べているが、その証拠を何一つ見つけていない。

    それは何故か、ES細胞の混入などしていないからである。


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    2016.08.14 Sun l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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