調査委員会がFES1の混入であるとしたSTAP幹細胞FLS3について、犯人の偽装工作がどのようなものだったのか、公開された保全リストを絡めながら、あらためて書いてみたい。

    ES細胞の混入ルートはFES1→129/GFP ES→FLS3だが、それぞれの細胞株について分かっていることは次の通りである。

    調査結果

    ここで、FES1と129/GFP ESの細胞株は1種類だが、FLS3には①FLS-3 P2(保全リスト試料No.5)と②P40 FLS-3 (No.99)と③FLS1~8,13(No.123)の3種類ある。

    保全リストの試料「GLS P3 2013.5.11(No.110)」の備考欄には、「1回起こしてP3となったもの」という記述があり、「P」はPassaged(継体)の頭文字で、P2はオリジナルのFLS3を1回、P40は39回、継体培養を繰り返したものと思われる。このP40はSTAP幹細胞の細胞分裂の限界を調べたときのものではないだろうか。

    調査委員会が調べたFLS3は当然、③のオリジナルだと思われる。

    偽装工作について書く前に、まず、調査委員会が作成した「近縁率表」から「ES細胞の混入」という結論の矛盾点を指摘しておく。

    「近縁率表」とは以下のもので、近縁率が高いほど、2つの細胞はより近い関係にある。

    近縁率表

    ・マウスの約30億塩基対の1%以上(突然変異ではないことになる)に通常の塩基対とは異なる塩基対が見られる箇所があり、それらをSNPs(一塩基多型)と呼ぶ。
    ・SNPsを調べればマウス系統の違いなど個体差を知ることができる。
    ・FES1とFES2(FES1と同種のES細胞)のSNPsを突き合わせると両者で異なるSNPsが24,649塩基対あった。
    ・この異なるSNPsの個所を各細胞株について調査、比較し、両者の近縁率を出した。近縁率99.95%というのは10,000個のSNPsで9,995個が一致するということである。

    ここで、混入に関係する3つの細胞株のそれぞれの近縁率は、「FLS3はFES1の混入によって作られた」では説明が付かないのである。

    混入矛盾

    (矛盾1)
    FES1は2005年に凍結保存されている。作った後は研究に使わなかったとあるので、作成後そのまま凍結されたことになる。そして小保方研の冷凍庫で見つかった129/GFP ESはそのFES1を解凍・培養して作っただけの細胞株のはずである。培養すると細胞分裂を起こすので培養変異が起きSNPsも変化するが、別の129/GFP ESからFLS3になったときの変異は近縁率で99.95%である。これに比べ、FES1と129/GFP ESの近縁率が99.28%というのはあまりにも低く、その説明が付かないのである。

    (矛盾2)
    FES1と129/GFP ESの近縁率は99.28%でFES1とFLS3の近縁率は99.33%である。このため、混入した129/GFP ESより、それを培養して作ったFLS3の方が近縁率が高いというのは明らかに矛盾する。

    では、実際にはどうなっていたかというと、下図のように、129/GFP ESとFES1はFLS3から逆に作られているはずである。これが、偽装工作である。

    業務妨害1

    (ステップ1)
    STAP細胞、FLS3が出来たとき、それを培養して129/GFP ESを作り、小保方氏の冷凍庫に置いた。従って、近縁率は99.95%とほぼ同じになった。

    (ステップ2)
    保全リストの「FLS(No.113)」の備考欄に「4番?4番ばかり使っていた(4番は感じ悪いので自分が使用)」との記述がある。小保方研には同種のSTAP幹細胞がFLS1~8と13の9種類あり、小保方氏はそのうちのFLS4を使っていた。おそらく若山研ではFLS3を使っていたのではないか。同じFLS3を使っているうちに培養変異が蓄積され、オリジナルとの近縁率は徐々に下がっていったと思われる。

    (ステップ3)
    FES1を調査委員会に送るとき、そのよく使っていたFLS3を(解凍・)培養してFES1として送付した。このため、オリジナルとの近縁率は99.33%となった。FES1からみて129/GFP ESがオリジナルより遠いのは培養変異がランダムで、129/GFP ESにはオリジナルにはない別の変異が入っているからである。

    (ステップ4)
    調査委員会では解析のため、細胞株を培養するから、このときにも培養変異が起きる。FLS3を培養して129/GFP ESをつくり、それらの近縁率を調べると合計、3回の培養が入ることになる。その結果が近縁率99.95%である。このため、培養1回で、近縁率は0.01~0.02%下がっていることになる。つまり、SNPs1万個につき、1個ないし2個の変異である。

    実はこのFES1がFLS3にすり替えられたという仮説を裏付ける状況証拠がある。次回はそれについて書くことにする。


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    2016.08.31 Wed l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    小保方氏が持っていた全試料が明らかになったので、「ES細胞の混入偽装」について、矛盾がないか改めて確認した。

    「ES細胞の混入偽装」とは、STAP細胞やSTAP幹細胞は実在するが、STAP細胞をES細胞を混入させて捏造したかのように偽装し、その成果を葬り去ったというものである。つまり、「STAP細胞はあります」だ。

    この偽装工作は2つの業務妨害からなる。ひとつは、STAP細胞作製時の実験業務妨害、もう一つは調査委員会が行う解析業務妨害である。ここで、実験業務妨害については既に時効となっている。

    この「混入偽装」は、次のように行われた。

    ①STAP細胞を作らせ、その後、出来たSTAP幹細胞で既存のES細胞をすり替える。
     →STAP細胞GLSが出来たとき、、既存のES細胞BOF-ESをそのGLSとすり替える。

    ②既存のES細胞がないときは、手持ちのES細胞と同じになるよう若山研のマウスをすり替えてSTAP細胞を作らせ、その後、出来たSTAP幹細胞でES細胞をすり替える。
     →129B6F1のES細胞がなかったときに作ったSTAP幹細胞FLSや129ホモのES細胞がなかったときに作ったAC129がこれにあたる。FLS3でFES1をすり替え、AC129-1で129B6F1ES1がすり替えられた。

    STAP幹細胞は電子顕微鏡で見てもES細胞とそっくりで、その特徴や培養方法が同じでありES細胞とは区別が付かない。ラベルにES細胞と書けば、STAP幹細胞はES細胞となる。

    後は、調査委員会がSTAP細胞はES細胞の混入であるという結論を勝手に出してくれる。

    「この2つのES細胞とSTAP幹細胞は染色体の欠失等、ゲノムの特徴は極めて一致しており、これらの特徴を偶然に共有する確率は極めて低い。従って、このSTAP幹細胞はES細胞に由来すると結論づけた。」

    当初はFES1,2以外は全て小保方研にあると考えていたが、そうでもなかった。偽装工作は、当初、考えていたよりもシンプルなものだった。

    まず、調査委員会が調査した細胞株であるが、下の表になる。調査委員会は当然、小保方研の細胞株を調査するだろうから、黄色になっているのが調査したと思われる細胞株だ。

    調査された細胞

    さて、ここで「混入偽装」があったとすると以下のようになる。黄色のところが業務妨害である。

    2つの業務妨害

    難しいトリックはない。マウスをすり替え、仔が生まれたら小保方氏に渡す。STAP細胞ができ、そこからSTAP幹細胞が作られたら、ES細胞と置き換えるだけである。129/GFP ESを小保方氏のボックスに置き、BOF-ESはすり替えておいて、山梨大では調査委員会から要請のあった細胞に、別の細胞株を依頼のあった細胞のラベルを貼って送るだけである。

    そして、この黄色のの赤枠で囲んだところに業務妨害の痕跡が残っている。それを今まで指摘してきた。(青色の○数字をクリックすると内容が分かる)

    「混入偽装」の観点から見て矛盾するのは、AC129に混入したとされるES細胞129B6F1ES1が小保方研になかったことだ。「混入偽装」なら、小保方氏に先に渡した129B6F1ES6が捏造に使われたES細胞となるはずだが、それがそうなっていない。もっとも、これは小保方氏にとっては無実の有力な証拠のひとつになるのだが。

    これは、おそらく次のような理由だと思う。

    実験業務妨害は今回の騒動を引き起こした2013年版STAP論文に対するものではない。笹井氏がまだ関わっていない2012年版STAP論文に対するものだ。犯人はこの論文を棄損しようとしたのである。

    この2012年版STAP論文は、2012年4月にネイチャー誌に投稿し拒絶され、6月にセル誌に投稿し同じく拒絶、7月にサイエンス誌に投稿し8月21日に不採用になっている。AC129が樹立されたのはその一週間程前である。おそらく、三大誌が拒絶したので、その時点で129B6F1ES6をすり替える必要性を感じなくなったからだと思われる。

    2016.08.18 Thu l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    木星通信氏が理研に開示請求して入手した、試料の帰属が確定した7月19日付の小保方研の保全リストが「小保方晴子さんへの不正な報道を追及する有志の会」に公開されている。

    少し見づらいが、STAP関連細胞株に関する主なものを抜粋すると以下のようになる。

    小保方氏保存試料リスト

    このリストでいろいろなことが分かるが、理研が小保方氏に対する告訴を断念した理由も窺い知ることができる。

    桂調査委員会がSTAP細胞に混入したとするES細胞は3つで、①GOF-ES、②FES1(≒129/GFP ES)と③129B6F1ES1であった。

    保全リストにあるのは、①GOF-ES(No102)と②129/GFP ES(No95)の2つで③129B6F1ES1はない。あるのは、129B6F1ES1を除く、2から6までの試料である。

    ES2~ES5とES6では保存場所が違い、また書き方も異なっている。ES2~5は129B6ES-2~5(No16~19)と書かれ、ES6は129B6F1GFP ES-6(No115)である。

    若山氏は2012年5月に受精卵ES細胞を129B6F1ES1~6まで6株つくり、その一部をコントロール用として小保方氏に渡していた。この小保方氏に渡した細胞株が129B6F1GFP ES-6だったと思われる。若山研が山梨大に移るとき若山氏は小保方氏にSTAP細胞関連株を株分けしているが、ES-2~5はそのとき一緒に渡した細胞株だったと思われる。

    この129B6F1GFP ES-6は調査委員会によって全ゲノム解析されたが、STAP幹細胞、AC129とは違うことが確認されている。つまり、このES細胞は混入には使われていない。

    では、混入したとされるES細胞はどこにあったかというと山梨大の若山研である。これも、木星通信氏によって公開されており、山梨大に移ったときのSTAP関連細胞株のMTA(移管書)にそれが、129B6F1GFP-1として書かれている。

    調査委員会が調べたSTAP幹細胞は25株、FI幹細胞は4株であるが、実際には40株以上ある。ES細胞の混入だとするとこれらは全てにES細胞が混入していなければならない。

    このため、混入できるとすれば、小保方氏か若山氏ということになるが、STAP細胞を捏造する動機があるのは小保方氏しかいない。しかし、その小保方氏は混入させたES細胞を持っていなかったのである。

    もちろん、STAP細胞実験中には若山研のES1に小保方氏はアクセス出来ただろう。しかし、渡されたES6を使わず、わざわざES1を使う理由は見当たらない。

    注目すべきは129B6F1GFPES-6の備考欄に書かれているコメントである。「由来不明」と書いている。小保方氏は若山氏からコントロール用として渡されたES細胞をそうコメントしていることになる。ES細胞で捏造する気はさらさらなかったのである。

    小保方氏は混入犯の容疑者に成り難い。これが、理研が小保方氏に対する告訴を断念した理由だったと思われる。


    2016.08.15 Mon l STAP細胞事件 l コメント (4) トラックバック (0) l top
    2014年1月にSTAP論文が発表されるとすぐに電気泳動写真の切り貼り、博論の画像流用といった論文不正疑惑が持ちあがった。内容的には論文の核心に触れるものではなかったが、STAP細胞そのものに対する疑念が生まれることになった。

    6月になると、突然、STAP細胞の存在自体を揺るがす情報が矢継ぎ早にもたらされた。

    ①2014年6月11日、日経サイエンスが、「STAP細胞 元細胞の由来 論文と矛盾」という題で8番染色体にトリソミーがあると指摘した記事を掲載。

    ②2014年6月16日、「STAP幹細胞を第三者機関が解析したところ、若山研がこれまでに維持してきたマウスや細胞のものとは異なるという結果が出た」と若山氏が記者会見。質疑応答では小保方氏がマウスをポケットに入れ持ち込んでも分からないという話まで出たが、マウスで作れるなら持ち込む必要はなく、持ち込むとすればES細胞ということになる。

    ③2014年6月18日、2チャンネルの掲示板に「小保方氏が若山研の引っ越しのどさくさにまぎれてES細胞を箱ごと盗んだ」という投稿があった。この後、NHKが7月27日、NHKスペシャル「『STAP細胞不正の深層」で取り上げ、また、石川氏がこれを理由に小保方氏を告発することとなった。

    ここで、①の遠藤解析ではトリソミーとは言えないと指摘したが、②は若山氏自身が7月22日に解析ミスがあり、若山研に存在するマウスだったと訂正している。③の告発については「事件の発生自体が疑わしい事案であり、犯罪の嫌疑が不十分だった」と神戸地検により否定されている。

    これらは全てES細胞でSTAP細胞を捏造したことを示唆する情報であったが、それらはことごとく間違っていたのである。そして、この間違った情報が後に重大な影響を及ぼすこととなった。

    理研は2014 年 4 月4 日、理事長を本部長とする「研究不正再発防止改革推進本部」を設置、その下部組織に外部有識者からなる「研究不正再発防止のための改革委員会」を設置していた。

    6月12日、この改革委員会が「研究不正再発防止のための提言書」でCDBの解体を提言したのである。会見で委員の一人は「STAP細胞事件」を「超電導研究不正(ヘンドリック・シェーン事件)」や「ES細胞捏造(ファン・ウソク事件)」と並ぶ三大不正事件の一つであるとまで断罪している(38分30秒から)。



    しかし、この時点では、石井調査委員会の2つの不正認定(3月31日)に対して、小保方氏が「不服申し立て」(4月8日)をし、理研が却下(5月8日)したばかりで、理研の予備調査(6月30日から)も始まっていない。

    この2つの不正認定された項目について、小保方氏の反論はさておき、2月下旬の若山氏の見解は次のようなものであった。

    (ア)切り張りが指摘されてたのはコントロールデータ。切り貼りはいけないが、物差しの位置をずらしただけなら、大きな問題はない。白い線でも入れておけばよかった。大事なのは右隣のSTAP細胞レーンでこの図で示したい内容には影響がない。

    (イ)使い回しが指摘されている画像は、自分が撮影し、元データはパソコンに保存されている。セットで掲載されている別の画像に問題はなく、間違いの画像を消しても内容に影響はない。彼女が自分で撮った画像でもないので、論文の編集途中でごちゃごちゃになった可能性がある。

    一方、不正認定した石井調査委員会の見解にしても、この時点ではSTAP細胞の捏造を示唆する情報はなにもなく、個人的な研究不正と捉えているだけで、世界三大不正事件の一つになるような話でもなく、とてもCDBの解体にまで踏み込めるようなものではなかった。

    (ア)研究者を錯覚させるだけでなく、データの誤った解釈へ誘導することを、直接の目的として行ったものではないとしても、そのような危険性について認識しながらなされた行為であると評価せざるを得ない。T 細胞受容体遺伝子再構成バンドを綺麗に見せる図を作成したいという目的性をもって行われたデータの加工であり、その手法が科学的な考察と手順を踏まないものであることは明白である。よって、改ざんに当たる研究不正と判断した。

    (イ)データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある。しかしながら、この2つの論文では実験条件が異なる。酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文1の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを小保方氏が認識していなかったとは考えがたい。また、論文1の画像には、学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えることから、この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である。このデータは STAP 細胞の多能性を示す極めて重要なデータであり、小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。

    実は、①について、遠藤氏は5月22日、理研幹部らにスライドを使って解析結果の全体を報告し、②については若山氏が、6月5日に理研の改革推進本部にその内容を報告していた。また、③については、理研が5月14日付で小保方研の保存試料リストを作っており、その中にLi氏の作ったES細胞も記載されていた。

    これらの誤った情報により、改革委員会は小保方氏がES細胞でSTAP細胞を捏造したと思い込んだのである。

    このため、改革委員会は、理路整然とSTAP細胞は有力な仮説であるとした笹井氏を糾弾し、またCDB解体まで踏み込み、笹井氏を追いつめてしまったのである。後から若山氏が解析は間違いでしたといっても後の祭りであった。

    この思い込みは、改革委員会だけに留まらず、理研の事前調査や桂調査委員会の調査にも大きく影響しているはずだ。調査はES細胞の混入を明らかにするために行われたはずである。もし、STAP細胞の存在を示すデータも合わせて探していたら、それを見つけていただろうと思う。

    何度も言うが、調査委員会で分かったのはSTAP関連細胞と酷似のES細胞があるというだけである。理研、調査委員会は予備調査を含め半年余り、ES細胞の混入の証拠を調べているが、その証拠を何一つ見つけていない。

    それは何故か、ES細胞の混入などしていないからである。


    2016.08.14 Sun l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    理研がSTAP関連細胞株の調査結果を「STAP cells are derived from ES cells」という題でNatureのBRIEF COMMUNICATION ARISINGに掲載しているが、その中に、STAP細胞関連株のSNPパターン表がある。

    公開データーベースに登録されたSTAP細胞は129系とB6系を掛け合わせた雑種マウスの細胞であったが、2012年4月に若山氏が同じ129系とB6系で受精卵ES細胞を作成している。その一つが小保方研で保存されていた129B6F1 GFP ES-6で、そのDNAのSNPパターンが次のように解析されている。こちらは、mRNAではなく直接、DNAを調べたものである。

    129B6F1GFPES6.png

    この図で分かるように、各染色体は完全な129/B6の組み合わせではない。ところどころB6ホモや129ホモの組み合わせがある。この傾向は図aをみて分かるように、STAP Chip-seq control(STAP細胞)やAC129-1(129B6F1のSTAP幹細胞)やFLS3でも同様である。これは図aの下から2番目の129-cag GFP mouseのSNPパターンで分かるように、129系マウスの一部がB6ホモで汚染されているからだ。

    一方、遠藤氏も論文の図S2に全染色体の解析結果を公開している。CD45陽性細胞とSTAP細胞が1つのグラフにまとめられており、縦軸の単位が変更されているが、グラフの形に違いはなく、B6の構成比を表したものだ。

    この理研の調査結果と遠藤氏の解析結果を各染色体ごとに比べてみると、両者は一致していない。

    まず、問題の8番染色体だが、一部にB6ホモの部分があるので、トリソミーでもB6のピークは33%にはならず、その分、50%よりにピークがくるはずである。

    8番染色体

    特に19番染色体は理研の調査では8割程度がB6ホモである。129/B6の部分は残りの2割しかないので、129系の比率は全体の1割しかないことになる。このため、遠藤解析が正しければグラフのピークは90%付近にはっきりと表れたはずである。しかし、それが全くそうなっていない。

    19番染色体


    18番染色体でも同様で、B6ホモの部分が多いのに、STAP rep2のピークはむしろ反対側の129系よりにある。

    18番染色体

    以上のことから、遠藤氏の用いた手法は鼻から解析には使えないものだったのかも知れない。もしくは方法は正しかったが、何らかの解析ミスがあったのかも知れない。いずれにせよ、その解析を持って8番染色体がトリソミーだとは言えないのである。



    2016.08.09 Tue l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top
    遠藤氏が「Genes to Cells」に投稿した論文のタイトルは「Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency」である。

    B6-type-allele.png

    上のグラフは論文の図3(A)の一部で、SNPよる8番染色体のB6構成比を表したものである。①のCD45+と書いているのはCD45陽性細胞、②はSTAP細胞である。CD45陽性細胞は脾臓のリンパ球からCD45陽性細胞だけを取り出したものである。CD45というのは白血球共通抗原でそれが+(陽性)になっていることで既に分化した細胞ということになる。それを酸処理したものが②のSTAP細胞である。それぞれにrep1とrep2とあるのは公開データベースにRep1とRep2の2種類が登録されているからである。その右横にある数字は調査したSNPの数を表している。

    グラフ①のCD45+細胞のピークは50%のところにあり、②のSTAP細胞は33%近くにあるので、これが8番染色体のトリソミーを表しているという主張である。

    このグラフからすると遠藤氏の解析は、mRNAからcDNAを作成し、断片化した塩基配列を次世代シーケンサで読み取ったものをゲノム領域にマッピングし、B6と129が異なるSNPをターゲットにSNP毎にそのB6タイプのリード数を数えて、構成比を算出したものだと思う。

    SNP解析

    ここで気になったのは、トリソミーだという②のSTAP細胞でピークを示すSNP数が全体の3%にも満たないことだ。あまりにも少な過ぎる。これで果たしてトリソミーだと言えるのか疑問に思ったので、129系とB6系のmRNAが同等に発現するとした遠藤氏が想定するmRNAの構成比シミュレーションプログラムをExcelのVBAで作ってみた。ロジックは以下のとおりである。

    構成比シミュレーション

    動かした結果は以下になった。論文ではカバー率20以上のSNPを使用したとなっているので、リード数は20~100の間でランダマイズしている。最大値を100としたのは①のグラフと似るように合わせたからでる。50位だとグラフがギザギザになり(それでもピーク値は6~7位である)、また大きすぎると山が高くなり過ぎて①の形から外れてしまう。トリソミーのときはmRNAは1本分多くでるのでリード数の最大値を1.5倍の150とした。

    トリソミーありなし


    結果、トリソミーがあるときは、ピークは33%付近になるが、ピーク値は9%とより高くなり、山も険しくなる。②のSTAP細胞の山が低くなだらかなのと対照的である。これはリード数が多くなるからに他ならない。このため、②のグラフがトリソミーを表すとはとても言えないと思う。

    次回は理研がDNAを直接解析したSNPパターンから、遠藤解析が何らかの間違いを犯していることを指摘しようと思う。

    2016.08.09 Tue l STAP細胞事件 l コメント (2) トラックバック (0) l top
    盗んだES細胞でSTAP細胞を捏造したという話が、神戸地検によって「事件の発生自体が疑わしい事案であり、犯罪の嫌疑が不十分だった」と完全否定されたので、8番染色体のトリソミーの話についても書いておくことにした。

    「STAP細胞」が「ES細胞」ではないかと世間に広く知られるようになったものに、8番染色体のトリソミーの指摘があった。これは、STAP論文に関して小保方氏が公開したデータを調査した横浜理研の遠藤氏が指摘したもので、2014年6月11日の日経サイエンスに、その内容が分かりやすく解説されている。

              日経サイエンスの記事(2014年6月11日)
    8番トリソミー

    ①STAP細胞の元になったのは「B6」系統と「129」系統のマウスを掛け合わせた雑種マウスの脾臓の細胞である。
    ②このため、STAP細胞はB6系と129系の2本の染色体を持ち、タンパク質を作る遺伝子が働くときは両系統のmRNAが働く。
    ③片方のみ働く場合やmRNAの量が両者で不均衡な場合もあるが、全体を調べれば、B6系と129系は50%ずつであると予想される。
    ④小保方氏はSTAP細胞のmRNAデータを公開しており、mRNA上にあるSNPを調べるとB6系か129系か分かる。
    ⑤その結果、1番から19番染色体上にあるSNPは8番を除いて、B6系と129系、それぞれ50%ずつであったが、8番染色体はB6系が33%しかなかった。
    ⑥この理由は129系が2本、B6系が1本とトリソミーになっているためと思われる。129系:B6系=2:1でB6系が33%になる。
    ⑦8番染色体のトリソミーはES細胞を長期培養したとき起きる染色体異常としてよく知られている。
    ⑧8番染色体にトリソミーがあると胎児は生まれてこないので、この登録されたデータは仔マウスの脾臓から作られたSTAP細胞ではなく、ES細胞である。

    この指摘は論文としてまとめられ、2014年9月21日に「Genes to Cells」に投稿されている。しかし、その論文のデータを見るかぎり、それをもってトリソミーとは言えないと思う。次回、その理由について書いてみたい。

    2016.08.07 Sun l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top