前エントリーで調査委員会の調査が実際には理研の調査であったことを書いたが、それでも調査委員会は理研に惑わされずに「STAP細胞はES細胞の混入」とは違った結論を出す事ができたと思われる。そうならなかったのは、自分たちの調査が自然界の現象を調べているわけではないという自覚が欠落していたからである。

    STAP騒動はいわゆる「事件」であり、試料の遺伝子解析による科学的知見だけで結論が出せるようなものではない。それについては、「実験ノートに何月何日、ES細胞作成と書かれていて、それを内容とするラベルの試料が見つかったとしても、実際にその中身がそのとき作られたES細胞かどうかは分からない」と言えば、理解頂けると思う。

    理研が調べて分かったのは「STAP幹細胞(と書かれた細胞)と酷似のES細胞(と書かれた細胞)がある」、これだけである。「STAP細胞はES細胞の混入である」はこれをベースに考えられる一つの仮説に過ぎない。この事件は人が介在している以上、あらゆる可能性を考える必要があった。それをあたかも自然現象のように「酷似のES細胞があるからその混入である」と結論付けるのは早とちりもいいとこである。

    殺人事件に例えれば、被害者に恨みを持つ容疑者宅の植え込みから、被害者の血痕が付いた包丁が見つかったので、その容疑者を犯人と断定したようなものだ。当然、それでは証拠不十分である。そう言うためには、他の状況証拠を積み重ねていく必要がある。しかし、調査委員会がその他の状況証拠を調べ他の可能性を考えた形跡は全くない。それでも報告書をみると容疑者の犯行ではないことを示している証拠が数多く書かれている。

    ①犯行時刻に犯行現場とは別の場所で容疑者をみたという証人が3人いる。
      →若山氏、丹羽氏、笹井氏という3人の一流の研究者がSTAP細胞を実際にみており、また電子顕微鏡写真にもSTAP細胞が撮られている。(若山氏は途中から証言を翻してしてるが)。 詳細
    ②殺害に使われた刃物は特殊な包丁で容疑者は手に入れることが出来ない。
      →混入したというES細胞の1つ、FES1は小保方氏が着任の1年前に引き上げられ、若山研にはなかった。
    ③包丁についていた指紋は容疑者のものではない。
      →混入したとされるES細胞129/GFP-ESは、それから作られたSTAP幹細胞FLS3より後に作られている。詳細
    ④容疑者は被害者に恨みを持っていない。
      →小保方氏は若山氏から渡されたマウスの種類に無頓着であった。ES細胞で捏造するなら、どのようなマウスかを知らねばならない。詳細

    「STAP細胞はES細胞の混入」とする調査委員会は「誰がやったか分からない」、「故意か過失か分からない」と言い、それは調査委員会の調査に限界があったためというが、私に言わせれば、その仮説が間違っているから、そこで立ち往生してしまっただけの話である。

    このSTAP細胞事件は容疑者を陥れるために、犯人が血のついた包丁を容疑者の庭に投げ入れた事件という方がよほど状況証拠をうまく説明出来るのである。

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    2015.10.29 Thu l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    「STAP細胞はES細胞の混入である」と結論付けた調査委員会は外部有識者のみで構成され、調査は公正で調査結果は信頼できると思っている人がほとんどだろう。しかし、実態はそのイメージとはかけ離れている。

    STAP細胞事件で理研が設置した委員会のひとつに「運営・改革モニタリング委員会」がある。その委員会がまとめた評価書(参考資料)にはSTAP細胞事件における調査の内容が詳しく書かれており、P66には試料の調査について次のような記述がある。

    ・第1回本部(研究不正再発防止改革推進本部)会合(4月8日)において「小保方氏が実験に使用した試料の検証について、まずは発生・再性統合研究センター(CDB)に対して、保存サンプルのリストを作成することができるか否かを確認することとした。」とし、CDBにリストの提出を依頼。

    ・帰属が明らかになった保存試料を論文と同じ方法で増殖させ、4月30日から遺伝子の予備解析を開始した。(CDBが実施)

    ・その後も帰属が明らかになった保存試料、CDBに保管されているES細胞等の遺伝子予備解析を実施。6月11日にNGS解析に関して、CDBとライフサイエンス基盤センター(CLST)の共同で行うこととした。

    これで分かるように、調査委員会を設置するまでに、既にどの試料を調査対象とするかをリストにまとめ、その解析を決定したのは理研である。また、CDBは実際の解析も行っている。これらを時系列にまとめたものが下の「試料の調査に関する内容一覧」であるが、調査委員会が設置されたときには、既にほとんどの試料は調査が開始されているのである。そのため、「研究論文に関する調査」委員会は第三者機関の調査結果というお墨付きが欲しかった理研が結果をアナウンスする役目として設置した委員会だったと言える。

    さらに、この調査委員会は7名の委員で構成されているが、そのうちの2名は弁護士である。「研究論文に関する調査」を行う委員会が、その設置段階で既に弁護士2名を入れているのだ。この委員の構成をみれば理研がどういう意図でこの委員会を設置したか窺い知れようというものだ。

    第三者の有識者からなるといえば聞こえはいいが、委員が寄せ集めでは調査結果を発表し役目を終えれば、報告内容に関する責任の所在も委員会の消滅とともに消えてしまう。報告内容に対して「ES細胞の作成日が不明なのにどうして混入したと言えるのか?」という突っ込みを入れる相手はもういないのである。

    試料の検査



    2015.10.29 Thu l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top