前回の記事では、

    ①公共データベースに登録されたSTAP細胞のSMARTerデータはES細胞様で、TruseqデータはXEN細胞様である。

    ②受精卵が胚盤胞期になると胎仔を形成する内部細胞塊、胎盤を形成する栄養外胚葉、卵黄嚢を形成する原始内胚葉が出現し、内部細胞塊よりES細胞、栄養外胚葉よりTS細胞,原始内胚葉よりXEN細胞の3つの幹細胞を樹立できる。

    そのため、体細胞を酸処理して7日後にできるSTAP細胞は初期胚の3つの幹細胞、①ES細胞様、②TS細胞様、③XEN細胞様のいずれかになっているのではないかと書いた。

    そこで、STAP細胞の作製過程を、ビー玉を転がして、そのビー玉を三段の踊り場に止まらせるようなものとモデル化してみた。

    ビー玉モデル

    体細胞を初期化するには適切な刺激を与えなければならない。刺激が弱すぎると最初の壁を超えられない。また、強すぎると転がりすぎる。これは細胞が死滅することを意味する。

    最初の壁を超えた一段目の踊り場で止まるとXEN細胞様になる。この状態に一番なりやすい。TS細胞様になるにはもう一段、壁を越えなくてはならない。TS細胞様になっているSTAP細胞データはないが、XEN細胞様があればTS細胞様があってもおかしくないので、TS細胞様の場を設定した。ES細胞様になるにはさらにもう一段、壁を超える必要がある。このため、ES細胞様にするのはかなり難度が高いといえる。

    さて、このビー玉モデルを使って、STAP細胞が出来た経緯を考えてみる。

    小保方氏が若山研に来る前に作っていた細胞は、時々はES細胞様になっていたかもしれないが、最初の壁を越えたXEN細胞様だったと思われる。この段階ではテラトーマが限界でキメラは出来ない。

    そこで、その道の第一人者、若山氏にキメラを作ってもらうよう依頼した。

    若山研に来た小保方氏はここで思いがけずXEN細胞様をES細胞様に引き上げる強力なツールを手にする。

    初期化すると細胞が緑色に光るOct4-GFPが組み込まれたGOFマウスである。緑色に光る細胞を目印に、XEN細胞様までだったSTAP細胞をES細胞様の場に引き上げる方法を小保方氏は体得していった。

    若山氏はこのES細胞様となったSTAP細胞を塊のまま胚に注入し、キメラを作ることに成功し、同時にSTAP幹細胞まで作ってしまった。マウスはすり替えられていたが、これをArticleとLetterの2つの論文にまとめて発表した。

    さて、今度は再現実験を考えてみる。

    小保方氏がSTAP細胞としてGRASに持ち込んだTruseqデータがXEN細胞様だったところからみて、遺伝子発現解析をしなければ3様のSTAP細胞を区別することはできないと思われる。これがSTAP細胞の再現実験を難しくさせている要因である。

    小保方氏が再現実験に失敗したとされたSTAP細胞はXEN細胞様だったと思われる。再現実験のために今までの環境をリセットされ、若山研で体得したES細胞様に引き上げる微妙な感覚を生かせなかったのが原因である。

    初期の頃のSTAP幹細胞GLSとFLSは同じ日に作られている。GLSとFLSが同時に作られたのには理由がある。GLSはBOFマウスから作られたSTAP幹細胞である。BOFマウスの体細胞は初期化されると緑色に光るので、ES細胞様になった目印に使える。GLSを作ったSTAP細胞の状態をコントロールとしてFLSのSTAP細胞を作っていたと思われる。

    再現実験でこの若山研のBOFマウスを同じように調整用に使えていたら、恐らく小保方氏はES細胞様のSTAP細胞を作り、再現実験ではキメラが出来ていただろうと思う。

    さて、丹羽氏の再現実験であるが、作った細胞はKlf4遺伝子の発現が高く、Truseqデータと同じようなパターンなので、おそらくXEN細胞様になっていると思われる。これではキメラは出来ないのである。

    STAP細胞が3つの状態をとるので、GOFマウスのような指標がない限り、ES細胞様のSTAP細胞を再現するのは困難だろう。逆に言えば、GOFのようなマウスを使えばSTAP細胞を再現することができるということになる。

    丹羽氏は初期の小保方氏のレベルに達しているので、丹羽氏がGOFマウスのようなマウスを使えば、自分でキメラまで作ってしまうだろうと思う。

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    2018.02.16 Fri l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top
    阿塁未央児氏のTwitterが時々、目に留まり、盛んに「XEN細胞」と言っているのを知っていたが、その言葉にはなじみがなかったのでスルーしていた。

    そんな中、公共データベースに登録されているSTAP細胞のTruseqデータの遺伝子発現パターンは「XEN細胞」のパターンに似ているというつぶやきが俄然気になってきて調べてみることにした。

    STAP細胞のTruseqデータとは、「捏造でない証拠がまた一つ」で紹介したところのOct3/4の発現が低く、ダメSTAPと思われていたものである。みると確かに「XEN細胞」の遺伝子マーカーGata4、Gata6、Sox17が高発現していた。(詳細は阿塁未央児氏のOneDriveの「XENとSTAPの遺伝子プロファイルの酷似」)

    「XEN細胞」は何かというと、「日本繁殖生物学会 講演要旨集」の中に次の記事がある。

    マウス初期胚における最初の細胞分化は,8細胞期から桑実期にかけて開始す る。胚盤胞期では,将来胎仔を形成する内部細胞塊,胎盤を形成する栄養外胚葉,卵黄嚢を形成する原始内胚葉が出現する。内部細胞塊より胚性幹(ES)細胞,栄養外胚葉より栄養膜幹(TS)細胞,原始内胚葉より胚体外内胚葉(XEN)細胞が樹立される。

    「XEN細胞」はES細胞、TS細胞に並ぶ幹細胞の一つらしい。

    3幹細胞-2
                      © 2016 DBCLS TogoTV / CC-BY-4.0

    これを知ってSTAP細胞に対する認識が一変した。

    強制的に初期化された体細胞は万能性なり全能性なりを獲得したSTAP細胞になるとされていたが、それは間違った見方だったんじゃないかということだ。

    SMARTerデータのSTAP細胞はES細胞様であったが、一方、TruseqデータのSTAP細胞はXEN細胞様である。おそらく、酸処理して7日後にできる細胞は初期胚の3つの幹細胞、①ES細胞様、②TS細胞様、③XEN細胞様の三者間で揺らいでいるというのが実像ではないのか。

    胚盤胞期の細胞なら自分の位置情報を認識しており、内部細胞隗なら内部細胞隗としての働きができるだろうが、体細胞が突然、強制的に初期化された場合、その細胞は自分の位置情報を消失していることになる。そのため、どのようにふるまえばいいか分からないだろう。

    残念なことに、この事実は小保方氏自身も気付いていなかった。もし、STAP細胞は3者の幹細胞間で揺らぐと一言でも書いていたら、STAP細胞はES細胞を混入して作ったなどという言い掛かりは誰も出来なかっただろうと思う。


    2018.02.01 Thu l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top
    最後の項目、「③特異点以外にも2つの塩基(以下、二重塩基)をもつ箇所がミトコンドリアに存在すること」についてである。

    ミトコンドリアの二重塩基をざっと拾い出して表にすると次のようになる。

    ミトコンドリアの特異点3

    これをみて分かるように、特異点(12,188)とそれ以外の二重塩基には明らかな違いがある。特異点以外の箇所はどの細胞株でも約8割、2割の塩基比率である。つまり、細胞株の種類とは無関係である。

    ある生物種集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時、これを一塩基多型(いちえんき・たけい、SNP : Single Nucleotide Polymorphism)と呼ぶ。

    Wikipediaの一塩基多型の説明であるが、マウスという生物種集団でいうとまさにそういう状態である。

    おそらく、これらの塩基は構造上、不安定な塩基なのであろう。従って、多型ができる。

    一方、特異点はクローンマウスに無関係な細胞株には全く多型がない。特異点の塩基はそのような不安定な塩基ではなく、二重塩基の成り立ちが根本的に違うということである。特異点の二重塩基はクローンマウスをつくったときに出来たものだとしか考えられないのである。

    「天網恢恢疎にして漏らさず」というが、犯人がクローン胚にたまたま選んだマウスが特異点に「A」をもつというレアなマウスであったというのは、まさに神のなせる業ということになるだろう。



    2018.01.30 Tue l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    以下、「ミトコンドリアの特異点はクローンマウスの痕跡である(1)」で書いた「②特異点が塩基『A』を持つマウスの系統」の話である。

    DNAにはその塩基の種類を見れば、マウスの系統が分かるSNPs(一塩基多型)が存在する。

    FLS3が129X1雌マウスとB6雄マウスの受精卵ES細胞なら、ミトコンドリアDNAは雌の129X1になっているはずで、どこかに129X1マウス系統のSNPsを検出できるはずである。

    ところが、ミトコンドリアDNAには129X1と分かるSNPsが存在しない。ミトコンドリアのDNAはわずか16,500塩基ほどで、常染色体の約一万分の一と桁違いに少ないのである。

    SNPデータベースでは129X1を含めマウス系統の約90種類のSNPsが調べられるが、ミトコンドリアの特異点(12,188)が塩基「A」になるものはない。そもそも特異点はSNPsとは認識されていないのである。

    その中で塩基「A」になっているマウスを調べ出したTs.Marker氏の情報は貴重なものであった。それによると、マウス系統は「NOD / ShiLtJ」である。もっとも、NOD / ShiLtJもSNPデータベースに登録されているマウス系統のひとつであるが、12,188にSNPsはないのである。

    NOD_ShiLtJ-2.png
                 特異点(12,188)が塩基「A」になっている

    特異点が「A」のマウスが存在するというのは非常に重要だ。このようなマウスがホスト胚であれば、クローンマウスはFLS3のようにヘテロプラズミーで生まれてくることになる。

    NOD / ShiLtJマウスを提供しているCharles River社のホームページにはNOD / ShiLtJマウスは非近交系のICRマウスが起源であると書かれている。

    実験マウスはクローズドコロニーと近交系の 2 種類に大別される。近交系は兄妹交配を 20 世代以上継続した系統で、系統内の個体はまったく同じ遺伝子組成をもつ。このため、SNPデータベースにSNPsを登録することが可能である。

    一方、クローズドコロニーは 5 年以上外部から種マウスを導入することなく、一定の集団内でランダム交配により維持されている系統で、このため、各個体の遺伝的性質はばらつきがある。従って、マウス系統としてのSNPsを登録できないことになる。

    若山研のクローン研究に伴う「動物実験計画承認申請書」ではクローズドコロニーマウスのICRマウスが申請されており、その数は年間、2,000個である。これだけの量ならどのタイミングでもクローンをつくることは可能だろう。

    1月31日から2月2日にかけて作ったFLS3のクローンマウスのホスト胚は、たまたま特異点が「A」のICRマウスであった。その後、5月25日、7月9日のCTS-1、11~13も同じICRマウスが使われたが、このときのマウスの特異点は「A」ではなく一般的な「T」でヘテロプラズミーにはならなかったのだろうと思う。

    2018.01.29 Mon l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    この129B6F1 Acr/GAG-GFPの細胞株だけを抜き出すと次のようになる。

    ミトコンドリアの特異点2

    それぞれの細胞株は塩基のT(チミン)が49%から100%まであり、それに伴いA(アデニン)が51%から0%になっている。

    実は、「FLS3にはクローンの痕跡がある」を書いてから、もしかしたらFES1の特異点に二重塩基はないのではないかと思っていた。それは、文献「ミトコンドリア DNA 複製の常識の一端が覆る」に次の記述を見つけたからである。

    個々の細胞には、数百から数千個以上ものミトコンドリアゲノムDNAがあり、しばしば突然変異することから、このDNAの組成はかなり不均一になると予測されます。また、歳をとると、一部の組織のミトコンドリアDNAは不均一になっていきます。しかし奇妙なことに、増殖している個々の細胞や新生児では全身で、全てのミトコンドリアDNAが同一の遺伝子型組成(同一のDNA配列)を持っています。この「ホモプラスミー」と呼ばれる状態へ短時間にリセットするという細胞質遺伝の現象は、酵母からヒトまで共通にみられます。

    クローンの仔はドナーとレシピエント両方のミトコンドリアDNAが混在する状態(ヘテロプラズミー)で生まれてくる。このため、クローンマウスから作ったSTAP細胞のミトコンドリアはヘテロプラズミーである。そこからSTAP細胞を培養してSTAP幹細胞を作ると、その培養は細胞の形質を変える培養なのでミトコンドリアはそのままであろう。

    しかし、いったん出来たSTAP幹細胞を培養するとSTAP幹細胞は増殖するので、ミトコンドリアがホモプラスミー化することになる。

    つまり、クローンマウスからFLS3が作られヘテロプラズミーとなったミトコンドリアはFLS3→129/GFP ES→FES1と培養していくにつれ、次第にホモプラスミー化していき、FES1では特異点の二重塩基がみられない可能性もあると思っていたのだ。

    実際には、④FES1と⑥129/GFP ESはT:80%、A:20%で共に特異点の二重塩基が検出されてる。公共データベースに登録されていた⑫STAP幹細胞はT:85%、A:15%で、Aの構成比がそれより低い。これらは、培養によるミトコンドリアのホモプラスミー化で説明できるのである。

    ⑤FES2については市販の129X1雌マウスとAcr/CAG-GFP B6雄マウス(岡部マウス)から作られた受精卵ES細胞だろうと思う。このため、二重塩基にはならなかった。

    一方、⑯FI幹細胞、⑰CTS-1の3つの細胞株では特異点の二重塩基が消えているが、これについては完全にホモプラズミー化したということではなく、別の理由だと思う。


    2018.01.21 Sun l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top