調査方法の問題点

    桂調査委員会はSTAP細胞に関する研究論文の疑義を調査するために設けられた委員会である。

    研究論文はArticleとLetterの2つの論文からなり、①体細胞を酸浴させると体細胞が初期化され、増殖しないが万能性をもったSTAP細胞ができたこと②そのSTAP細胞はある条件下で培養すると増殖性を持ったES細胞のようなSTAP幹細胞になること③また、STAP細胞から胎児、胎盤両方に寄与する新しいタイプの幹細胞(FI幹細胞)もできたことが書かれている。つまり、STAP論文は新しい特性をもった細胞、幹細胞について書かれているのである。

    STAP細胞は増殖力がなく、時間が経つと死滅するので小保方研には残っていない。しかし、STAP幹細胞とFI幹細胞は残っており、調査委員会はこれらの細胞株について調べている。

    ところが、面白いことにこれら細胞株の特性を調べた遺伝子発現解析の結果が報告書には全く書かれていない。書かれているのは全ゲノム解析の結果で、塩基配列の並びがどうなっていたかということだけである。例えて言うと、どんな性格の人間か調べなければならないのに、身長、体重を測ってよしとしたようなものである。

    そのような調べ方しかしていない「STAP関連細胞はES細胞由来」という結論は果たして信用できるのかということである。

    思考実験

    受精卵は胚盤胞期に内部細胞塊 と栄養外胚葉へと分離する。内部細胞塊からES細胞が、栄養外胚葉からはTS細胞が樹立できる。そこで、同じ受精卵からES細胞とTS細胞をつくり、ES細胞株に「ES-1」とラベルする。そして、TS細胞株には「X」とラベルする。

    これらを桂調査委員会が調査すれば、同じ受精卵から作られているので、全ゲノム解析で2つの細胞株が一致する。従って、調査委員会は「『X』はES細胞『ES-1』由来である」と結論づける。もちろん、「X」はES細胞由来ではない。

    今度はラベルを逆に貼って、TS細胞を「ES-1」、ES細胞を「X」とする。この場合にも、調査委員会は「『X』(実はES細胞)はES細胞『ES-1』(実はTS細胞)由来である」と結論する。ラベルにESと書かれているのはES細胞だと調査委員会が思っているからだ。

    遺伝子発現解析をすればES細胞かTS細胞か分かるので、このような結論には達しない。遺伝子発現解析をやらず、全ゲノム解析だけの解析が如何に問題があるか分かるというものである。

    何故、遺伝子発現解析をしていないのか

    では、何故、調査委員会は遺伝子発現解析をやらなかったのであろうか。これについては解析はしたが結果を載せていないだけだと思われる。

    委員会がSTAP論文の研究不正調査のために設置されている以上、Letter論文の目玉であるFI幹細胞CTSを調べていないわけがない。調べるためには遺伝子発現解析は必須であり、FI幹細胞CTSの遺伝子発現解析は行われているはずである。

    その結果、ES細胞であったなら、調査委員会はその遺伝子発現解析の結果を喜んで公表しているだろう。調査委員会はそれで、STAP関連細胞はES細胞由来だったことを証明できるからである。

    それがないのは公共データベースのChip-seqデータと同様にES細胞特異遺伝子とTS細胞特異遺伝子が共に発現していたからだと思われる。また、それはTruseqデータのようにES細胞とTS細胞2つの細胞株が混じったものでもなかったのだろう。つまり、調べるとFI幹細胞CTSは混じりっけなしの細胞株で論文通りの遺伝子発現パターンだったと考えられるのである。

    調査委員会は、この結果に大いに困惑したことだろう。FI幹細胞CTSがES細胞FES1と同じゲノム構造を持ちながら、遺伝子発現パターンはES細胞とは異なっているからである。

    ある方向から光を当てるとその影は「C」になり、別の角度から光を当てると「E」になる。そのような物体の形は果たしてどのようなものか、調査委員会はその答えを見つけられなかったのである。このため、遺伝子発現解析の結果を封印し、全ゲノム解析の結果だけで、世間が予想していた結論を発表したのだろうと思う。

    全ゲノム解析ではES細胞の混入にみえ、遺伝子発現解析ではSTAP関連細胞が実在するようにみえるのは、STAP細胞が実在するにも関わらず、STAP細胞をES細胞の混入で作ったかのように偽装した真犯人がいたからである。

    CE.png
                                    20世紀FOX

    スポンサーサイト
    2018.04.10 Tue l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    石川氏の告発は以下のようなものだった。

    ①盗んだES細胞はリ・チョン氏の78本と若山清香氏(若山夫人)の2本

    フライデー2015-5-22

    盗んだES細胞でSTAP細胞を捏造したと告発した。

    告発状

    ③ノーネスチャンネルで、「129/GFP ES」2本の写真を示しながら、「小保方氏は若山研からES細胞を盗み、それをSTAP研究に用いた」と語っていた(DORAのブログ

    ④津田哲也氏の公開動画に、告発に際しての次のような会話がある。

    「石川氏」:あれ、どうする。今日、話してたサンプルの写真
    「別の人」:あ、はい。あれもそりゃあ添付すべきでしょうね




    ⑤FBで、石川氏は告発状の最終版は、窃盗のみで、ES細胞を混入させてSTAP細胞と偽称したことを除外、また、被告発人を「不詳」としたことを明らかにした。

    一方、桂調査委員会の調査報告書は次のようになっていた。

    ⑥混入したとされたES細胞は「FES1」、「GOF-ES」、「129B6F1ES1」の三種類で、調査時に小保方研のフリーザーにあったのは「GOF-ES」のみで、「129B6F1ES1」は山梨大に、「FES1」は京大にあった。

    ⑦小保方研のフリーザーに残っていた「129/GFP ES」はES細胞「FES1」とほぼ同一であったが、小保方氏、若山氏をはじめ、CDB若山研メンバーは全く知らないと回答した。

                        

    石川氏が、盗んだES細胞でSTAP細胞をねつ造したと告発した以上、そのES細胞はSTAP細胞の作製に用いられ、かつ、小保方研にあるとおかしいES細胞である。

    混入したとされたES細胞のうち「GOF-ES」は小保方氏の依頼に答え、譲渡されたことが調査報告書で明らかにされており、これを窃盗では告発できない。また、「129B6F1ES1」と「FES1」は小保方研にはないので、これも窃盗では告発できない。

    結局、石川氏が盗んだと言えるのは誰も知らないといった「129/GFP ES」だけである。つまり、石川氏は山梨大に出向き、若山夫人と会って「129/GFP ES」が若山夫人のものであることを確認したからこそ、それを盗んでSTAP細胞をねつ造したと、大々的に告発したのである。もし、若山夫人が否定していれば、あのような形での告発にならなかったのは明らかである。

    最終的に捏造を除外し、「129/GFP ES」の窃盗だけの告発になったのは、調査報告書でSTAP関連細胞は「FES1」由来とされ、「129/GFP ES」由来とは一言も書かれていなかったからで、「129/GFP ES」を使ってねつ造した証拠を石川氏が示せなかったからである。また、同様に小保方研にあった「129/GFP ES」を小保方氏が盗んだと言える証拠もなかったことになる。

                        

    さて、そこで婦人公論(3月13日号)に書かれている、小保方氏の告発を受けての事情聴取の様子であるが、2016年2月16日の日記には次のように書かれている。

    窃盗の疑いがあるというES細胞についての説明を受けた。報道された元留学生が作製したES細胞に加え、「エイプリルヒッポさんのもの2本」と写真を見せられた。その写真は調査委員会の調査期間中、「持ち主不明のES細胞」と呼ばれていた細胞チューブだった。私は見知らぬES細胞が自分のサンプルボックスに入っていたことを知らされ、薄気味悪く思っていた。結局、「持ち主不明」と呼ばれたまま、調査は終了した。ともに公の場であるにもかかわらず、調査委員会で知りえなかった新事実を、事情聴取の場で聞かされた衝撃は大きかった。思わず刑事さんの話を遮って「ご本人の証言ですか?」と聞いてしまった。「そうです」と返事をされた。ヒッポさんのだったんだ。盗まれたって言ってたんだ

    (1)元留学生が作製したES細胞に加え、「エイプリルヒッポさんのもの2本」
    これは、①の赤字に対応している。エイプリルヒッポさんとは4月1日生まれの若山氏をエイプリルフール先生と呼んだ小保方氏がエイプリルをつけることで、若山夫人のことだと分かるようにしたものだろう。

    (2)「エイプリルヒッポさんのもの2本」と写真をみせられた
    ③と④の赤字に対応している。

    (3)その写真は調査委員会の調査期間中、「持ち主不明のES細胞」と呼ばれていた細胞チューブだった
    ③、⑦の赤字に対応している。

    これらは捏造を除外した石川氏の告発状況及び調査委員会の調査結果とピタリと一致しており、「129/GFP ES」を他のES細胞で置き換えることは不可能である。

    2月16日は石川氏の告発から1年以上経っている時期である。当然、若山夫人の事情聴取も終わっているはずで、刑事は小保方氏に見せたのと同じ写真を見せ、事情聴取をしていることだろう。その結果、若山夫人がそれを自分のES細胞であり、盗まれたものだと刑事に話したことになる。

    石川氏が勝手に告発状の内容を拡散したことを若山夫人は怒りをもって抗議したであろう。そのため、以後は「129/GFP ES」が表に出ない形に変えていったのだと思う。

    この日の小保方日記は、今までSTAP細胞事件の観客席にいた若山夫人にスポットライトを当て、舞台に上がらせたことになる。「あの日」では、若山氏に対する不信感を綴っているだけであったが、この出来事で、小保方氏は自分の身に何が起こったかを理解したのではないかと思う。3月20日発売の「小保方晴子日記」、乞うご期待といったところである。

    2018.03.05 Mon l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top
    前回の記事では、

    ①公共データベースに登録されたSTAP細胞のSMARTerデータはES細胞様で、TruseqデータはXEN細胞様である。

    ②受精卵が胚盤胞期になると胎仔を形成する内部細胞塊、胎盤を形成する栄養外胚葉、卵黄嚢を形成する原始内胚葉が出現し、内部細胞塊よりES細胞、栄養外胚葉よりTS細胞,原始内胚葉よりXEN細胞の3つの幹細胞を樹立できる。

    そのため、体細胞を酸処理して7日後にできるSTAP細胞は初期胚の3つの幹細胞、①ES細胞様、②TS細胞様、③XEN細胞様のいずれかになっているのではないかと書いた。

    そこで、STAP細胞の作製過程を、ビー玉を転がして、そのビー玉を三段の踊り場に止まらせるようなものとモデル化してみた。

    ビー玉モデル

    体細胞を初期化するには適切な刺激を与えなければならない。刺激が弱すぎると最初の壁を超えられない。また、強すぎると転がりすぎる。これは細胞が死滅することを意味する。

    最初の壁を超えた一段目の踊り場で止まるとXEN細胞様になる。この状態に一番なりやすい。TS細胞様になるにはもう一段、壁を越えなくてはならない。TS細胞様になっているSTAP細胞データはないが、XEN細胞様があればTS細胞様があってもおかしくないので、TS細胞様の場を設定した。ES細胞様になるにはさらにもう一段、壁を超える必要がある。このため、ES細胞様にするのはかなり難度が高いといえる。

    さて、このビー玉モデルを使って、STAP細胞が出来た経緯を考えてみる。

    小保方氏が若山研に来る前に作っていた細胞は、時々はES細胞様になっていたかもしれないが、最初の壁を越えたXEN細胞様だったと思われる。この段階ではテラトーマが限界でキメラは出来ない。

    そこで、その道の第一人者、若山氏にキメラを作ってもらうよう依頼した。

    若山研に来た小保方氏はここで思いがけずXEN細胞様をES細胞様に引き上げる強力なツールを手にする。

    初期化すると細胞が緑色に光るOct4-GFPが組み込まれたGOFマウスである。緑色に光る細胞を目印に、XEN細胞様までだったSTAP細胞をES細胞様の場に引き上げる方法を小保方氏は体得していった。

    若山氏はこのES細胞様となったSTAP細胞を塊のまま胚に注入し、キメラを作ることに成功し、同時にSTAP幹細胞まで作ってしまった。マウスはすり替えられていたが、これをArticleとLetterの2つの論文にまとめて発表した。

    さて、今度は再現実験を考えてみる。

    小保方氏がSTAP細胞としてGRASに持ち込んだTruseqデータがXEN細胞様だったところからみて、遺伝子発現解析をしなければ3様のSTAP細胞を区別することはできないと思われる。これがSTAP細胞の再現実験を難しくさせている要因である。

    小保方氏が再現実験に失敗したとされたSTAP細胞はXEN細胞様だったと思われる。再現実験のために今までの環境をリセットされ、若山研で体得したES細胞様に引き上げる微妙な感覚を生かせなかったのが原因である。

    初期の頃のSTAP幹細胞GLSとFLSは同じ日に作られている。GLSとFLSが同時に作られたのには理由がある。GLSはBOFマウスから作られたSTAP幹細胞である。BOFマウスの体細胞は初期化されると緑色に光るので、ES細胞様になった目印に使える。GLSを作ったSTAP細胞の状態をコントロールとしてFLSのSTAP細胞を作っていたと思われる。

    再現実験でこの若山研のBOFマウスを同じように調整用に使えていたら、恐らく小保方氏はES細胞様のSTAP細胞を作り、再現実験ではキメラが出来ていただろうと思う。

    さて、丹羽氏の再現実験であるが、作った細胞はKlf4遺伝子の発現が高く、Truseqデータと同じようなパターンなので、おそらくXEN細胞様になっていると思われる。これではキメラは出来ないのである。

    STAP細胞が3つの状態をとるので、GOFマウスのような指標がない限り、ES細胞様のSTAP細胞を再現するのは困難だろう。逆に言えば、GOFのようなマウスを使えばSTAP細胞を再現することができるということになる。

    丹羽氏は初期の小保方氏のレベルに達しているので、丹羽氏がGOFマウスのようなマウスを使えば、自分でキメラまで作ってしまうだろうと思う。

    2018.02.16 Fri l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top
    阿塁未央児氏のTwitterが時々、目に留まり、盛んに「XEN細胞」と言っているのを知っていたが、その言葉にはなじみがなかったのでスルーしていた。

    そんな中、公共データベースに登録されているSTAP細胞のTruseqデータの遺伝子発現パターンは「XEN細胞」のパターンに似ているというつぶやきが俄然気になってきて調べてみることにした。

    STAP細胞のTruseqデータとは、「捏造でない証拠がまた一つ」で紹介したところのOct3/4の発現が低く、ダメSTAPと思われていたものである。みると確かに「XEN細胞」の遺伝子マーカーGata4、Gata6、Sox17が高発現していた。(詳細は阿塁未央児氏のOneDriveの「XENとSTAPの遺伝子プロファイルの酷似」)

    「XEN細胞」は何かというと、「日本繁殖生物学会 講演要旨集」の中に次の記事がある。

    マウス初期胚における最初の細胞分化は,8細胞期から桑実期にかけて開始す る。胚盤胞期では,将来胎仔を形成する内部細胞塊,胎盤を形成する栄養外胚葉,卵黄嚢を形成する原始内胚葉が出現する。内部細胞塊より胚性幹(ES)細胞,栄養外胚葉より栄養膜幹(TS)細胞,原始内胚葉より胚体外内胚葉(XEN)細胞が樹立される。

    「XEN細胞」はES細胞、TS細胞に並ぶ幹細胞の一つらしい。

    3幹細胞-2
                      © 2016 DBCLS TogoTV / CC-BY-4.0

    これを知ってSTAP細胞に対する認識が一変した。

    強制的に初期化された体細胞は万能性なり全能性なりを獲得したSTAP細胞になるとされていたが、それは間違った見方だったんじゃないかということだ。

    SMARTerデータのSTAP細胞はES細胞様であったが、一方、TruseqデータのSTAP細胞はXEN細胞様である。おそらく、酸処理して7日後にできる細胞は初期胚の3つの幹細胞、①ES細胞様、②TS細胞様、③XEN細胞様の三者間で揺らいでいるというのが実像ではないのか。

    胚盤胞期の細胞なら自分の位置情報を認識しており、内部細胞隗なら内部細胞隗としての働きができるだろうが、体細胞が突然、強制的に初期化された場合、その細胞は自分の位置情報を消失していることになる。そのため、どのようにふるまえばいいか分からないだろう。

    残念なことに、この事実は小保方氏自身も気付いていなかった。もし、STAP細胞は3者の幹細胞間で揺らぐと一言でも書いていたら、STAP細胞はES細胞を混入して作ったなどという言い掛かりは誰も出来なかっただろうと思う。


    2018.02.01 Thu l STAP細胞事件 l コメント (1) トラックバック (0) l top
    最後の項目、「③特異点以外にも2つの塩基(以下、二重塩基)をもつ箇所がミトコンドリアに存在すること」についてである。

    ミトコンドリアの二重塩基をざっと拾い出して表にすると次のようになる。

    ミトコンドリアの特異点3

    これをみて分かるように、特異点(12,188)とそれ以外の二重塩基には明らかな違いがある。特異点以外の箇所はどの細胞株でも約8割、2割の塩基比率である。つまり、細胞株の種類とは無関係である。

    ある生物種集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時、これを一塩基多型(いちえんき・たけい、SNP : Single Nucleotide Polymorphism)と呼ぶ。

    Wikipediaの一塩基多型の説明であるが、マウスという生物種集団でいうとまさにそういう状態である。

    おそらく、これらの塩基は構造上、不安定な塩基なのであろう。従って、多型ができる。

    一方、特異点はクローンマウスに無関係な細胞株には全く多型がない。特異点の塩基はそのような不安定な塩基ではなく、二重塩基の成り立ちが根本的に違うということである。特異点の二重塩基はクローンマウスをつくったときに出来たものだとしか考えられないのである。

    「天網恢恢疎にして漏らさず」というが、犯人がクローン胚にたまたま選んだマウスが特異点に「A」をもつというレアなマウスであったというのは、まさに神のなせる業ということになるだろう。



    2018.01.30 Tue l STAP細胞事件 l コメント (0) トラックバック (0) l top